素人でも記帳・確定申告などができるように開発された新しい会計ソフトが現在急速に利用者を拡大しています。
そのため、個人事業主の確定申告や小規模法人の記帳業務などは、仕事として成り立たなくなりつつあります。
そのような状況下で、税理士の人数は公認会計士も含めると大幅に増えており、苦しい環境であることはあなたも感じていることだと思います。
しかし、そのような状況下でも顧客を増やしている税理士事務所もあります。
今回は、どうすれば新規顧客を開拓し、安定した事務所経営ができるのか説明します。
顧客獲得の前に経営戦略を立てる
税理士の方と話していると、特にどんな顧客を獲得したいのか、漠然としているケースがあります。
「どんな顧客でもいいから増やしたい」という方は、それで事務所経営が上手くいくのか少し立ち止まって考えてみてください。
牛丼チェーン店は、「安くて早い」という特徴でお客様を集めています。
高級レストランは、素材にこだわったシェフの料理と上質なサービスでお客様を集めています。
あなたが飲食店を経営していたら、どちらも取り入れることはできませんよね?
税理士事務所の経営でも同じことが言えます。
安い料金に高品質で手厚いサポートをつけると、どうなりますか?
みんなが深夜まで休みなく働くことになったり、顧客サポートがいい加減になったり、無理がすぐに表面化してきます。
安定した経営を行うのであれば、長期的にみんなが回る仕組みを考えなくてはいけません。
あなたの理想の顧客はどんな人ですか?
地域、料金、会社規模、事業内容など、理想の顧客の特徴を書き出してみてください。さらに、その顧客にいくらでどんなサービスを行うのが理想なのかも考えてみましょう。
顧客との距離感を考えながら、値段とサービス内容をいくつかの料金プランに分けておくのもいいですね。
もちろんそのとき、あなたの事務所が利益の出る数値計画を立てなければいけません。
顧客側のニーズも多様化していますので、理想の顧客を決めることで、広告の反応率が変わったり、営業が決まりやすくなったり、違いが現れてきます。
理想の顧客を決めるときの注意点
理想の顧客とは、マーケティングでいう「ペルソナ」と呼ばれるものです。
ただ、このペルソナという手法は使い間違えると危険です。
例えば、理想の顧客像が「売上と利益が大きくて、単価の高い顧客で、経営者は若くて、事業は成長していて、・・・・」というようなものだったとしましょう。
実際にそのような顧客は、あなたの営業範囲にどのくらいいますか?
目標とする理想の顧客を決めることは大切ですが、現実に即して、十分なターゲット数がいる顧客像を考えなくてはいけません。
税理士事務所の広告宣伝方法
私がお手伝いしているのは、主にインターネットからの集客ですが、顧問先拡大の方法はインターネットだけではありません。
事務所の看板、名刺、チラシ、セミナーなど、オフラインでも十分に効果のある宣伝方法はたくさんあります。
集客・顧問先確保に成功している事務所は、1つだけの手法にこだわらずに、様々な方法をミックスさせてクロスマーケティングに取り組んでいます。そうすることで、大きな効果を生むことができます。
例えば、看板や名刺を見てくれた人が、URLを打ち込んで税理士事務所のホームページへ訪問してくれて、依頼を決めてくれるかもしれません。
インターネットで探す人が増えたとはいえ、未だに実際に会って話したほうが信頼につながり、顧問先として選んでくれる可能性も高くなります。
ホームページの役割もすぐに依頼してもらうためのものというよりは、まずは相談や問い合わせにつなげて、実際に会ったときに契約してもらうというのが成約率を高くする流れです。
「広告宣伝方法」と聞くと、あなたは最近話題のソーシャルメディアや、最新のマーケティング手法、知り合いから聞いた効果的な集客手法などが思い浮かんでいるかもしれません。
しかし、広告宣伝方法は1つだけを行うのではなく、ミックスさせて行ったほうが、効果は大きくなります。
1つ1つのキッカケを大切にして、自分を知ってもらう機会を増やしていきましょう。
既成概念に囚われない
今でもインターネットからの集客に懐疑的な方もいます。
しかし、インターネットから顧問先を拡大している事務所は少なくありません。
また、そのような事務所は経営者が比較的若いケースが多いように見受けられます。
若い経営者の方は、インターネットにも慣れていて、新規独立開業した顧問先の若い経営者とも相互理解が進みやすい面もあるかもしれません。
さらに、業務効率化にも積極的です。先進的な企業は、税理士事務所だけに留まらず、ITを駆使することで、他社を圧倒する効率化経営、スピード業務を実現しています。
私も様々な効率化やコスト削減に取り組んでいますが、他社の話を聞くと、なぜそんなことにそこまでお金をかけているのだろう、と思うことは少なくありません。
このように、既成概念に囚われすぎると、新しいIT技術やマーケティング方法への抵抗感が大きくなり、せっかくのチャンスを棒に振ってしまいます。
他の皆がやり始めてからでは、大きな結果は出ません。
これはビジネスでは当然のことですよね。
先行者だけが大きな利益を享受することが出来るのです。
新規顧客の増やし方
すでにマーケティングを実践し、新規顧客の増やし方を知っている事務所は強いです。
1つの広告手段で成果が出ているなら、他の広告手段でも上手くいく可能性が高いからです。
これは、顧客がどのようなことに反応して依頼してくれるのか理解しているからですね。
様々な方法をミックスさせてマーケティングを行いましょうという話をしましたが、まずは、どれか1つ徹底的にPDCAを回して、効果的な広告とは何なのかを突き詰めることがお勧めです。
そうすれば、他の方法にも応用し、展開することができます。
マーケティングでは、このPDCAを回すことが非常に大切です。
失敗してもそれは「そのメッセージでは伝わらなかった」という1つの発見です。
失敗してもチャレンジを繰り返していきましょう。
具体的な集客方法についてさらに知りたい人は、こちらのページ(開業後に失敗しない!税理士が集客・マーケティングで成功する7つの方法)を見てください。
既存顧客からの紹介
マーケティングについて説明してきましたが、既存顧客からの紹介があれば、一番楽ですよね。
広告費もかかりませんし、紹介してくれるということはあなたの事務所の良さも理解してくれているはずです。
しかし、紹介数を増やすのは簡単ではありません。
しかも、そもそもの顧客数が多くなければ、紹介は増えませんし、紹介が途絶えたときに経営が苦しくなります。
将来経営が苦しくなったときのためにも広告で顧客を獲得できるスキルを磨いておくと、紹介だけに頼らない顧客増大施策が取れるようになります。
独立開業時の顧客引き抜き
引き抜きの問題についても少し触れておきます。
税理士・会計士などで独立開業するときは、顧客がいなくて大変です。
税理士の顧客は、一度契約すれば、長い間お客様になってもらえますが、契約してもらうまでの顧客獲得コストは安くありません。
そのため、独立のときに顧客を引き抜く方もいるようです。
ただ、顧客の引き抜きは、不当行為にあたる可能性があるため、勤務していた税理士事務所・税理士法人などの営業上の秘密を利用するなどの行為は行わないようにしましょう。
判例でも「自由競争の範囲を逸脱した違法な顧客奪取であれば不法行為」とされています。
営業活動を止めずに続ける
この記事を読んだ方の中には、もしかすると魔法のような方法があるかもしれないと期待された方がいるかもしれません。
実際は、突出した集客成果を出している事務所も特別なことを行っているわけではなく、完成度の高いマーケティングを行っているに過ぎません。
ただ、そのクオリティは、他の事務所が見よう見まねで実践しても真似しきれないレベルまで昇華されています。
いくつものマーケティングパターンを試して、PDCAを回して、クロスマーケティングを行って・・・というように、試行錯誤を経て大きな実績があります。
営業やマーケティング活動を行っていると、ときにはクレームを受けたり、失敗して広告費がかさんだり、嫌なこともあると思いますが、続けることで成果につながります。
誰でも最初から上手くはいきません。
嫌なことがあっても決心して営業活動を我慢強く続けていきましょう。
まとめ
新規顧客獲得の手法は、成功パターンの表面だけを真似してみても上手くいきません。
市場環境や、サービス料金、サービス内容など、状況が違えば、あなたの事務所に合った営業・マーケティングが必要です。
自分の事務所の特徴を客観的に見ながら、営業エリアや広告手法などを選んでいきましょう。